世の中には「オレの理想は野垂れ死にだから」みたいな願望を口にする人が、意外に多い。ご立派な心がけである。本人はカッコイイ死に方のつもりだろうが、「野垂れ死に」でも誰が後始末をするのだ、ということは覚えておいていただきたい。事故、自殺、突然死などによる身元不明の遺体(法律用語では行旅死亡人)は、発見された場所の自治体が引き取り、火葬、納骨、捜査などを行うことになっている。警察が検視をし、事件性がないと判断されれば、自治体の職員と葬儀社のスタッフの手で火葬にする。遺骨は市区町村が保管し、縁故者探しのため、発見場所と身体や衣類の特徴を記した情報が官報に載る。「上記の者は平成○年○月○日午前○時○分頃、○○市○○町一丁目二番地の路上にて発見されました。引取人不明につき火葬に付し、当市納骨堂にて保管してあります。心当たりの方は、市福祉課に申し出てください」といった具合。五年をすぎても引き取り手があらわれなければ、遺骨は公営墓地などに無縁仏として合葬される。火葬等の費用には死亡者の所持金をあて、足りない分は自治体が負担する(つまりは税金でまかなわれる)。「野垂れ死に」でもタダではないのだ。高齢化社会の現在では、身寄りのないお年寄りが一人でひっそり息を引き取り、何日もたってから発見されることも珍しくない。路上生活者の死も茶飯事だし、大事故や大災害の際には身元不明の死者が大量に出る。彼らが好んで行旅死亡人になったのかどうか、「オレの理想は野垂れ死に」の人はよーく考えてみるべきだろう。「野垂れ死に」を避けるには、万一の事故に備えて身元が確認できるものを身につけておくことが必要だろう。それでも「野垂れ死に」したい?それならせめて火葬費用相当の現金(二〇万円くらいね)をポケットに入れて死になはれ。
披露宴にきものを着て出席すると、いちばん乱れるのがおはしょりの部分だ。座れば必ずたるむから、まず下側に于を入れて両手で引っぱって下に引いて直す(次ページイラスト参照)。引っぱりすぎて長く出てしまったら、余分な部分を帯の中へつり上げて調節する。襟元や胸元のゆるみは、右腰のおはしょり部分にある襟先を下に引いて、上前のたるみを直す。そのとき伊達襟も一緒に引っぱること。下前のほうは左手を身八つ口から中に入れ、右襟の先を引っぱって締める。後ろ襟は、長襦袢についている半襟が飛び出しがちだが、ここはきものをめくって腰に手を入れ、長襦袢を引く。引き下げる箇所は、ちょうど帯の下で後ろの中心にある長襦袢の背縫いのあたりだ。裾の乱れは、おはしょりの下の腰紐につり上げて挟み込むと簡単だが、必ず上前の右端のほうが切り上がるように整えよう。
何気なく使っているが、意外に人を不愉快にさせるのが「大丈夫です」という言葉だ。これはお伺いを立てる側と、それに許可を与える側の間に上下関係がある言葉なので、下の立場になる人が使うと、違和感が生まれるのだ。たとえば、お店のレジで「このカード使えますか?」というお客様の質問には「はい、ご利用いただけます」と答えるのが正しい。「大丈夫です」だと、お店側が「使ってもよろしい」と許可しているような、尊大な感じになる。また、上司から「この書類を今日中に作ってほしい」と依頼されたら、引き受ける部下の答えは「はい、わかりました」が基本。目下の者は仕事を選ぶ立場にはないのだ。「大丈夫です」は上から目線の言葉。上の立場の人の命令に対して、許可を与える形で答えるのはおかしい。